カテゴリ:詩( 12 )

蓄音機 / 金子みすゞ


「蓄音機」

大人はきっとおもっているよ、
子供はものをかんがえないと。

だから私が私の舟で、
やっとみつけたちいさな島の、
お城の門をくぐったとこで、
大人はいきなり蓄音機をかける。

私はそれを、きかないように、
話のあとをつづけるけれど、
唄はこっそりはいって来ては、
島もお城もぬすんでしまう。

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by yamanomajo | 2017-08-10 12:16 |

蜂と神さま / 金子みすゞ


「蜂と神さま」

蜂はお花のなかに、
お花はお庭のなかに、
 
お庭は土塀(どべい)のなかに、
土塀は町のなかに、
 
町は日本のなかに、
日本は世界のなかに、
世界は神さまのなかに。
 
そうして、そうして、神さまは、
小ちゃな蜂のなかに。

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by yamanomajo | 2017-06-27 18:10 |

無垢の予兆 / ウィリアム・ブレイク


To see a World in a grain of sand,
And a Heaven in a wild flower,
Hold Infinity in the palm of your hand,
And Eternity in an hour.

一粒の砂のうちにも世界を見、
一輪の野の花のうちにも天国を見、
手のひらに無限をつかみ
一時(ひととき)のうちに永遠を持つ。

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by yamanomajo | 2017-06-27 18:06 |

魂に告ぐ / 服部つや


「魂に告ぐ」

いとしい私の魂よ
しずかに独りを守っておいで

孤独の悲哀が
どんなに深くあろうとも
夕暮れの小窓によって
さめざめと寂寞を嘆く
おまえであろうとも
より以上の幸いを
求めてはならない

大きい喜びを願う心
やがては それが
永遠に癒されぬ心の傷手
数倍の悲哀を
もたらす源となるのだから

幸福は 真夏に咲く
毒空木のように
そしてまたは秋咲く
彼岸花のように
遠くで見ている時にのみ
美しい

うるわしい あの影に
深く秘められた 毒の液を
誰が思い及ぼそう

与えられた運命に
満足して静かに
「寂」そのものに浸っているのが
お前にとって一番尊い。

いとしい私の魂よ
唯独りを守っておいで
孤独の悲哀が
どんなに深くあろうとも。

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by yamanomajo | 2017-06-24 19:46 |

真実 / 千野敏子


「真実」

真実
真実
真実というただ一つのことをおいて
どうしてこの世を生きてゆく道があろうか。
虚偽の世界に住み
そしてその世界より一歩も出ずして
虚偽のうちに死んでゆく者の哀れさ
真実に生きよう。
つねに真実に生きよう。

今の自分に思想などあるものか。
それは経験より生まれ出づるもの
数々の激しい苦闘
それを闘い抜いて初めて生まれるもの
今の自分はこの世に初めて生まれてきたときの、そのまま
苦闘の経験も何も持たない
ほんの何もない、幸福に浸り切った一人の少女
この自分に思想などあるものか。
やがて思想の生まれてくるときまで
そうだ、いつの日か自分は思想を生む
いや、生まねばならない。
数々の激しい苦闘の後の
輝ける玉の如き思想を
自分は生まねばならない。
やがてその思想を生み出すときまで
自分はつつましく、ひそやかに
文も書き、詩も書いていこう。
世の怒涛に向かって敢然と大声で叫ぶ
それは数々の激しい苦闘の後
誰にも恥じぬ玉のごとき思想の生まれたとき
そのときまで、自分はつつましく、ひそやかに
地球の一隅にじっと座って身の回りのものを眺めながら何でもしていこう。
激しい苦闘の経験の後の玉のごとき思想を
今持っていなくとも
私は誰にも恥じない唯一つの信念を持っている。
真実。
そうだ、これを誰に恥じよう。
真実に生きよう、
常に真実に生きよう。
決して自己を欺くことなしに。
真実という唯一のことなくて
どうしてこの世を生きてゆかれようか。
真実に生きよう。
やがて輝ける玉のごとき思想を生み出すときまで
――そしてその思想を生むに到るまでの
数々の激しい苦闘も
常に信実をもって闘い抜くのだ――
そのときまで、真実に地球の一隅にじっと座って
何でもしていこう。
真実に生きるもののみが、最後の精神の勝利者となることを信じつつ
ひそやかに
真実に生きよう
つねに真実に生きよう。

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by yamanomajo | 2017-06-22 08:19 |

不思議 / 金子みすゞ


「不思議」

私は不思議でたまらない、
黒い雲からふる雨が、
銀にひかっていることが。

私は不思議でたまらない、
青い桑の葉たべている、
蚕が白くなることが。

私は不思議でたまらない、
たれもいじらぬ夕顔が、
ひとりでぱらりと開くのが。

私は不思議でたまらない、
誰に聞いても笑ってて、
あたりまえだ、ということが。

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by yamanomajo | 2017-06-15 19:20 |

欲がなければ / 良寛


欲がなければ一切が満ち足り
求めたがると万事が行きづまる
粗食だけでも飢えはしのげるし
衣一枚だけでも体を覆うことができる

一人で山に出かけて鹿と戯れ
村では大きな声を上げて子供たちと一緒に歌う
岩の下の清流で体を洗い清めながら
峰の向こうの松の木を眺める

私は深い森の中の家に住んでいる
緑の植物たちは生い茂るがままにしている
人との付き合いに急き立てられることもなく
時おり遠くから聞こえるキコリの歌に耳を澄ませる
背に太陽の光を浴びながら衣をつくろい
夜には神秘の月を見上げながら詩を書く

さて世間の方々に申し上げる
満ち足りるとは
物に恵まれるということとは無関係であると

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by yamanomajo | 2017-06-13 08:55 |

独りで生きる / ナンシー・ウッド


「独りで生きる」

わたしたちはみな独りで生きている。

友達も恋人も
子供も母も
行く道を長く照らしてはくれない。

孤独から
わたしの知らないわたしが立ち上がる。

恐れから
祖先の叡智がやって来る。

性急さから
老年の粘り強さが育つ。

これらの記憶の影が
魂に通じる新しい道を作り
それによってわたしたちは
独りで生きることで共に生きる。

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by yamanomajo | 2017-06-09 09:11 |

生きていることについて / ナンシー・ウッド


生きていることについて」

生きているってどういうこと
と蛇に聞けば
腹に草を感じることさと答えるだろう。

生きているってどういうこと
とブルーバードに聞けば
世界の上を高く飛ぶことさと答えるだろう。

生きているってどういうこと
と木に聞けば
一ヵ所に根を下ろすことさと答えるだろう。

生きているってどういうこと
とアリに聞けば
踏まれないようにすることさと答えるだろう。

生きているってどういうこと
とコヨーテに聞けば
他のものたちよりも鋭敏であることさと答えるだろう。

生きているってどういうこと
とカタツムリに聞けば
自分のペースで行くことさと答えるだろう。

生きているってどういうこと
と川に聞けば
一番荒々しい自由を見つけることさと答えるだろう。

生きているってどういうこと
と風に聞けば
吹きたい方に吹くことさと答えるだろう。

生きているってどういうこと
とマキバドリに聞けば
知っている中で一番甘い歌を歌うことさと答えるだろう。

生きているってどういうこと
とハリモグラに聞けば
自分自身であることを学ぶことさと答えるだろう。

生きているってどういうこと
と虹に聞けば
地球のまわりに美をかけることさと答えるだろう。


自然界のものはどれもみなまぶしいばかりに生き生きとしていて
創造主がなぜ
彼らを各々の場所に配したのかを明快に物語っている。
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by yamanomajo | 2017-06-07 07:56 |

もし私が一人の心の傷を癒すことができるなら / エミリー・ディキンソン


If I can stop one heart from breaking,
I shall not live in vain;
If I can ease one life the aching,
Or cool one pain,
Or help one fainting robin
Unto his nest again,
I shall not live in vain.

もし私が一人の心の傷を癒すことができるなら
私の人生は無駄でない
もし私が一人の生命の苦しみをやわらげ
一人の苦痛をさますことができるなら
弱った一羽のコマドリを
もういちど巣に戻してあげられるなら
私の人生は無駄ではない

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by yamanomajo | 2017-06-04 14:26 |

孤独、自然、瞑想、哲学、生命。


by 三浦花心
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