2017年 11月 25日
自然農に生きる人たち―耕さなくてもいいんだよ
「補ったものを“肥料”と考えると間違ってしまうんです。あくまでも、生活のなかから出たものを畑に戻すという発想なんです」
「命の営みにひたすら沿う自然農は、この世界に何ら問題を招かず、永続可能な農のあり方なのです。これからは『何かしないといけない』という考え方はいりません。余計なことをしないことが大切です。環境問題にしても、問題を解決するのではなく、問題を招かない生き方をすることです」
「自然農は、あらゆる命を大事にする農だと思います。私たち人間も含めて、多くの命がお互いに作用して、その力が引き出されるのではないでしょうか? 人間が手を加えることで自然が貧弱になるのではなく、逆に自然の力の喜びがあふれかえるような農が、自然農なのかなと思います」
「自然農の田畑に立つと、とにかく気持ちいいんです。体内のリズムが乱れたとき、大きな自然のなかにいるだけで、調子を取り戻せる気がしますが、自然の営みに沿った、余計な手出しをしない田畑でも、多様な命があふれているので、そこに立つと同じような感じを受けるのでしょうね」
「ジャガイモを収穫したあとの畑を、生まれて初めて耕うん機で耕しました。軽油の排気ガスのにおいが鼻につくし、掘り残したジャガイモが切れて出てくるし、逃げまどうカエルの姿を見て、何か違うという気持ちが残りました」
「有機農業は何か違うという気がしていたんです。草がなくてかわいそうって思っちゃって。畑が砂漠に見えるんですよね」
「雪国や寒冷地では自然農はやりにくい、できないと思われる人もいますが、そんなことはありません。たしかに暖かい土地のほうがやりやすいけど、周りの自然は豊かなんだから、種をまく時期や定植の時期をずらしたり、品種をちゃんと選んだりすることでじゅうぶんの恵みをいただけます」
「自然農を中心にして、肥料のにおいがしない、野菜の香りがするものを作りたいですね」
「自然界のことわりに沿えばできる。沿わなければできない。簡単なことなんです」
「小学六年生のとき、突然“死の恐怖”が襲ってきたんです。それからずっと、その恐怖をどうしたら克服できるか、私の人生の大きなテーマになっていました。(自然農に出会い)個々の命は別々でも、すべての命はつながっているんだと実感できて、死の恐怖に対する長い旅は終わりました。川口さんに出会って、大いなる安心の世界に誘われたのです」
「自分が変われば土が変わる。土が変われば田畑が変わる。田畑が変われば米や野菜が変わる。米や野菜が変われば世の中が変わる。そんなことを思いながら、草々や野菜たちといっしょに自然農を楽しんでいます」