衣裳 / 荒津寛子


「衣裳」

なぜ美しいものが着たいのです
沼のやうな
この階段をのぼりながら
ふしぎに思うのです
風が吹けば
どこからくるともわからない
風のような嗅覚に挑んで
黄や紫の踊りを舞うのでしょうか
紅白粉の匂いが散れば
一せいに飛び立つ蝶々の群
産卵期のひとときまえの
狂おしい白蟻の舞踏
乙女らよ
何かに追われるように
なぜ美しいものが着たいのです
いつ のぼりつめるともわからない
階段を
よくみれば それは
ひとつの大きな輪なのですね
もう千年以上もこの階段を
のぼっているのですが
乙女らよ
野に行こう
厚ぼったい胸飾りを捨て
草笛を吹いて競おうよ
黒髪で
私らの歴史を縫うため
そして
ゆめにきらめく
まなざしのため


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by yamanomajo | 2018-03-26 20:25 |