
「いのち新し」
あわい桔梗(ききょう)むらさき
その空のかなたのきびしい寒波
口をひらけば人々の不安を語るとき
わが庭のさくら小さく新芽をふくみ
乙女椿は かたく宝石ほどの蕾を待つ
自然は 新しい手のすべてを支度して
医者のごとく 風雪をしのぎゆく
その真剣にして備えある姿をみよ
私たちは いのちの尊厳を愛し
生きるに難しい今の世の現象にあわてず
信ずべきを信じ まっすぐに生きてゆく
そのことのいとなみに しっかり立とう
よしや落伍するものの一人であったにしても
その時までをつよく清らかに生きて
心静かに 死ぬべき時に死にたい
寒風と氷雪の中をしのいで
やがて花ひらく これらの花たちは
悲哀あるとき 最も立派なものの姿
ああ真の絶望を知らずして
どうして希望を語る資格があろう
おびえず あわてず
愛くるべき苦悩はもれなく受け
烈風の中に 毅然たる雄魂をもって
いま新しき世界に 生きよう
このとき 私たちは みんなだ
よわい おたがいの胸をつなげて
力のかぎり しのぎゆく
いのち新しき みんなだ