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若きたましいに / 竹内てるよ


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わが 生の日は さびしけれど
人をにくまず 自らをすてず
いのち永らえての 小さき幸を
つゆくさの
ただ ひと朝の 花に宿す


つゆくさのただひと朝の花に、幸をみいだして暮らすような、静かで、さびしい生活の中から、この著書を、世の中のみなさん方におくることができる、こんな喜ばしい日が来るなどということを、どうして、思いかけたことでありましょう。

創隆社の方から、書いてみないかとお話のあったとき、はたして、私にそのお役が務まるかどうかと、とまどいしたくらいでした。それでも、勇気をもってお引き受けしたのは、ただ、みなさん方への心からの友情と、希望とにほかならないのであります。

私は、詩を生涯の仕事にしてゆくにつれて、たのしい一つの望みをもちました。

終戦後の、砂漠のような、世の中の荒れはてた中で、少女雑誌を発行した中原淳一さんが、十年間、私を詩の選者にしてくださったのでしたが、そのとき、私は思ったのです。

このような世の中になってしまっては、何をもって、この荒れはてた人の世をやわらげ、光をあたえることができるであろうか。

それは、私は私なりの、ささやかな考え方でありました。私なりのささやかな考え方からいたしますと、詩の分かる、詩を愛する人たちを、大勢つくって、そのやわらぎによって世の中を明るくして、やがて世界中を平和に、明るく、幸せにしたいということでありました。

私は、考えたのです。

詩の分かる、詩を愛する人々というのは、けっして、戦争をしないにちがいないと思ったのです。そして日本中に、詩の分かる、詩を好きな男の人や、女の人をいっぱいにすることによって、平和な、戦争のない世界にしたい、そんな単純な希望でありました。

あなたたちのひとりひとりが、詩の好きな、詩を愛する人々になってくださることによって、けっして、残忍なことや、人間同士で血をながすようなことをしないにちがいない、と信じられるからです。

すべて、美しいもの、真実なものを愛することのできる人は、殺し合いや、傷つけ合うことをしないにちがいないという、私の信条は、今も昔も変わりがないからであります。

私はこの書に、人生を愛してもらうことを書きました。あなたたちが、その清らかな、そして、健康で確かな肉体と精神とをもって、それぞれ、自分たちが生きてゆく人生を、心から愛して生きてくださるように、やがて、この書を、心からみなさんの幸せを祈って、まずしい自分の才能やわずかな経験もかえりみず、ただ、みなさんに対する愛情だけでまとめた私が、この世にいなくなっても、広いこの地上の片すみで、山の見える、窓のある小さい部屋から、みなさんの幸せを祈って一つの書をおくった人間であったことを、みなさんが忘れてしまわれても、なお、熱い心をもって、みなさんの幸せを祈っていたひとりの人間で、仕舞いまでありたいと、思っています。

みなさんが、詩を分かり、詩を愛してくださるとき、一生の私の夢が、少しずつ叶えられてゆくのです。その感謝と、希望とをもって、この書を、みなさんに捧げます。




「若きたましいに」

いまは ただひたすらに学ぶときです
そして人生を 愛するときです
まっすぐに 生きてみるときです

人々は 生活の不安に声をあげ
その折々の心の動きに 右往左往し
落ち着きなく何人にも ぐちを語る

それらの人々を おそれてはなりません
不平と ぐちとは
古き時代の 去ってゆく足音です
若きたましいは その音をすてるべきです

いまは ただひたすらに 学ぶときです
そして こよなく自己の生きる日を愛し
つよくたしかに 歩むのです

木陰に立ちより
つめたい一杯の水を おのみなさい
舌にあたるあなたの味覚がたしかなら
水を 水としてかんじることができれば
あなたは 大丈夫生きられます

人は たやすく たおれるものではありません

若きたましいを 守る肉体を
あなたは 持っています

あられのように 世の中の不幸が
あなたの上に ふりかかるとき
片手もて それをよけ
片手に 永遠の真理をかかげて
あなたは しっかりと生きるのです









by yamanomajo | 2021-04-06 16:47 | 言葉