
「ひと」
夜も昼も絶えず春も秋も絶えることのない ひとつの銀色の光がある
ひとは その光の中に生まれるその光の中で育ちその光の中でひととなる
悲しみと喜びを問わずときには絶望も問わず その底にはひとつの銀色の光がある
ひとは その光の中に生きるその光は見えずその光は届かず あることさえも気づかれず
ひとは なおその光の中に生きている
夜も昼も絶えず春も秋も絶えることのない 雨のような銀色の光がある
母が逝きその年が明けて世界孤独という言葉をはじめて持った時にその光が はじめてわたくしに届いた
それは 不断光と呼ばれている ほとけの光で不断 ということが特質の 寂(しず)かな銀色の光であった
そんな光に出遇うことは まことにさびしいことであったが気がついてみれば それは
ひとが生まれる前から そこに在りひとの成長を見守りひとの成熟を看取り
ひとが老い 死に去ってから後も変わらずそこに在る
永劫の銀色の光ひと という銀色の寂かな光なのであった
眼に見えず降りしきる 銀色の雨永劫の宇宙実在として降りしきる
わたくしという銀色の光不断光
夜も昼も絶えず春も秋も絶えることのない ただひとつの銀色の光がある
…
「秋の祈り」
金木犀咲き匂う秋の日に祈りの心が たどりつく
わたしの心が 静かでありますようあなたの心が 静かでありますよう
わたしの心が 流れますようあなたの心が 流れますよう
金木犀咲き匂う秋の日に祈りの心が たどりつく
わたしの心が 人を責めませんようあなたの心が 人を責めませんよう
わたしの心が そこに仏(神)を見ますようあなたの心が そこに仏(神)を見ますよう
金木犀咲き匂う秋の日に祈りの心が たどりつく
わたしの心が 傲(おご)りませんようあなたの心が 傲りませんよう
わたしの心が 幸(さきわ)いますようあなたの心が 幸いますよう
金木犀咲き匂う秋の日に祈りの心が たどりつく
わたしの心が 流れますようあなたの心が 流れますよう
わたしの心が 幸いますようあなたの心が 幸いますよう
金木犀咲き匂う秋の日に祈りの心が たどりつく祈りの心が たどりつく

「祈り」
南無浄瑠璃光
海の薬師如来
われらの 病んだ心身を 癒したまえ
その深い 青の呼吸で 癒したまえ
南無浄瑠璃光
山の薬師如来
われらの 病んだ欲望を 癒したまえ
その深い 青の呼吸で 癒したまえ
南無浄瑠璃光
川の薬師如来
われらの 病んだ眠りを 癒したまえ
その深い せせらぎの音に やすらかな枕を戻したまえ
南無浄瑠璃光
われら 人の内なる薬師如来
われらの 病んだ科学を 癒したまえ
科学をして すべての生命(いのち)に奉仕する 手立てとなさしめたまえ
南無浄瑠璃光
樹木の薬師如来
われらの 沈み悲しむ心を 祝わしたまえ
樹(た)ち尽くす その青の姿に
われらもまた 深く樹ち尽くすことを 学ばせたまえ
南無浄瑠璃光
風の薬師如来
われらの 閉じた呼吸を 解き放ちたまえ
大いなる その青の道すじに 解き放ちたまえ
南無浄瑠璃光
虚空なる薬師如来
われらの 乱れ怖れる心を 溶かし去りたまえ
その大いなる 青の透明に 溶かし去りたまえ
南無浄瑠璃光
大地の薬師如来
われらの 病んだ文明社会を 癒したまえ
多様なる 大地なる花々において
単相なる われらの文明社会を 潤したまえ
Om huru huru Candali matangi Svaha
オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ
(薬師如来 真言)